タイトル『Silent light』

ごめんね。

ごめんね。

謝ることしかできない私を許してとは言わない。

だけど


謝らせて





ごめんね






Silent light



「ケフ・・・・カ?」

目の前で割れたガラスケース。

ばらまかれている破片

燃え上がる研究所

倒れている研究員達

飛び散る血

そして

目の前に立っている人は



――・・・・誰?

「ケフカ・・・?」

爆発した研究所の中で倒れていた私は薄れる意識を無理やり起こした。

焦点が定まらない目であたりを見回す。

見た先には人影がある。

「ケフカ・・・・・?」

もう一度その人影に対して問う。

それが振り返った。

・・・?」

それは私の名前を口にした。

「ケフカ・・・大じょ・・・・」

言いかけた私の腕を彼はつかんだ。そして一気に引っ張る。

「・・・・っ!!」

驚いて声を出しかけた私の口を手で押さえた。

今、彼の目は赤い。元の青い目とは違う。

そして、いつも結っている髪の毛も解けている。



そう、まるで







――別人のように





ケフカが私に向けるまなざしがいつもと違う。

なにか指すような光の中にどこか冷たさと狂気が感じられた。

。私は手に入れたんだよ。力を。魔法を!!!!」

そう叫ぶように言うと狂った笑いを浮かべた。

「ケフカ・・・・?どうしちゃったの?・・・ケフ」

名前を呼びかけた私を一気に顔の目の前約20センチの辺りまで強引に引き寄せた。

そして狂った笑みをもって言う。

「これで も私も誰も傷つかなくて済む!!!私は何もかも無に帰する力を手に入れた!!!」

「う・・・・・嘘・・・」

「本当だ。なんなら試してみるか。」

やめて。といおうとして声がでなかった。

ケフカはなんとか起き上がった研究員に向かって

力を魔法を――・・・・

「ディジョン」

彼が呟いた呪文により、その研究員は開いた黒いゲートの中に飲まれていった。

ディジョン。その魔法はその人間の意志にかまわず二度と戻ってこれない異次元にとばす。

「――っ」

私の目から涙が伝ったのがわかった。

「・・・・・嘘よ・・・・」

涙で歪む焦点を無理やりケフカに合わせる。

「嘘よ・・・!!どうしてこんな!!!!」

泣き叫ぶ私をケフカは狂気の笑みで見つめているだけ。

向こうには苦しそうで辛そうな顔をして倒れているシド。

近くには実験成功に喜びを感じているのか満足げに狂った笑みを浮かべるガストラ。

私は今目の前の光景がすべて信じられなかった。

「嘘よ・・・・・・!!!!!」

私をかばってこうなったなんて。

こんなことなら私が犠牲になればよかった。

彼に相談しなければよかった。



「私をかばわないで・・・・わたしの代わりに犠牲にならないで・・・・」

反射的に私はそういっていた。

眼からはたえず涙が零れ落ちる。

抑えきれない感情がこみ上げてきた。



ごめんね。



謝っても済むことじゃないのに



謝らせて



謝ることしかもうできない私を許してほしくはない。



けれど今はこれしかいえない。



ごめんね・・・・



























あれからずいぶん月日が経った。



私はリターナーに寝返り、セリスもリターナーの一員になって皆で帝国を倒そうとした。



魔大陸で三闘神の復活をもとめようとした。



結局とめられなくて、世界は崩壊した。









皆死んでしまった。





そう思っていた。

生き残ったのは私ひとりだって。



ずっとそう思ってた。









むしろそれが現実のほうが





私にとっても世界にとってもよかったのかもしれない。









まさか





彼が







ケフカが











生きていたなんて





















ガレキの塔の頂上まで皆で登ってきた。

そして見たのは三闘神の魔法によって三角形の結界を身にまとった彼、ケフカ

もうあのころの優しい彼はどこにも見当たらない。

「まだ生きていたのですか。」

ケフカの声が聞こえた。

皆がケフカをにらみつけている。私は下を向いたまま。

動けない。



みたくない。



「やはり、あの時殺しておけばよかったですね。」

「お前なんかに殺されはしない!!!・・・・レイチェルを・・・・レイチェルを奪ったお前なんかに!!!」

ロックの叫びが聞こえた。隣ではセリスが苦痛の表情を浮かべてケフカを見ている。

「いつかは私を殺しに来ると思っていましたよ。だが、私は三闘神の力で大きな魔力を手に入れた。もはや貴方達に勝つすべはないでしょう。」

言い切るようにいった彼にエドガーが舌打ちをしたのが聞こえた。

「おろかな。魔法とは人の命を奪うものでもましてや、世界を破壊するものでもない!!!魔法はそのために生まれたんじゃない!!」

「争いを生む力なんてなくなればよかったのよ。だったら今頃こんなことにはなっていなかった」

「命は生まれ続けるわ!いくら破壊しても!」

「それも私がすべて壊す。」

ティナとセリスの悲痛の叫びをケフカは一言で切り捨てる。

「希望・生きる力そんなものは私にとっては邪魔なものでしかない。それにこの壊れた世界で貴方達にそんなものが存在するんですか?」

相変わらず狂ったような顔と声でケフカが問うた。

皆が順々に自分の大切なものをいっていった。

「ふふ・・・・ならばそれもすべて私が破壊して差し上げますよ!!!!!」

そう叫んだ彼に私はとっさに叫んでいた。

「やめてっ!!!!」

「これはこれは、私の愛しの じゃないですか。」

ケフカがそういって笑ったのが聞こえた。

私は歪む視界でケフカを見上げる。

「どうして・・・・っ!!破壊からは何も生まれない!!!なのにどうして・・・っ!!!」

叫ぶ私に彼はすこし表情をきつくする。

「この世界はすでに破壊の糸をたどっている。その世界で今更破壊以外で何が生まれると」

「信じてるよ。」

言いかけたケフカの言葉をさえぎるように私は呟いた。

「ケフカのこと信じてるよ。今でも。」

?」

隣にいるロックやエドガーそれに仲間達までもが驚いた表情を浮かべた。

「馬鹿な・・・いまだに戯言など」

「戯言・・・なんかじゃないよ」

私は涙をふき取って立ち上がる。そして、今までちゃんと見れなかったケフカをまっすぐ見た。

「本当に信じてる。いつか貴方が戻る日を信じてる。貴方の中にまだ自我が存在してることを信じてる。」

立ち上がるとライトフォートを発動する。

「ちょ・・・っ!! ・・・っ待て・・・・っ!!」

とめようとしたロックを振り切って私は地面を蹴り上げ、天に昇る。

昇るはケフカより高いところ。

「・・・・・・私、皆が大事だから。大好きだから」

告げる私の足に絡まっていた光が背に移り、光翼となった。

「皆が大好きだから。世界中のみんなが大好きだから。その人たちが苦しむようなことはさせたくないし、この世界も元に戻してみせる。」

瞳を閉じる

「諦めなければきっとこの世界は元に戻る。死んだ人たちも傍にいる。消えたりなんかしない。・・・・ほんとうに消えちゃうのは私たちが諦めた時だけ。だから・・・私は諦めない。諦めないよ。」

瞳を開いた。そして一気にケフカに向かって飛ぶ。

「今更・・・なにを言っている!!!死んだ人間は消え、世界は崩壊し、いずれは滅びる!!!そして私は破壊を続けるだけだ!!!」

魔法を放つ。それは に直撃した。

「・・・・っ!!!」

!!!!」

皆の声が聞こえた。

私は激痛と衝撃に耐える。

「信じたい。・・・貴方の心の中に残る自我を。心を。信じたいから・・・信じてるから!」

ケフカが魔法を緩めた。

「なっ・・・!!」

「大好きだよ・・・皆大好きだよ・・・・・だから失いたくない。・・・・もちろん貴方も・・・・!!」

「やめろ・・・・っ!!」

ケフカが頭を抱えて苦しみだす。

一気に飛ぶ。そして右手をケフカに向かって伸ばした。

「大好きだよ・・・・・!!」

そういって伸ばした右手にケフカの手が伸ばされた。

「・・・・・・っ!!」

ケフカが反射的に手を伸ばしたのだ。

「大好きだよ・・・・・・!!!」

伸ばされた手が触れ合った瞬間、光があたりを包んだ。































ロックが瞳を開ける。

そして、目の前に広がった光の中をただただ見つめる。

皆も同じ。

「・・・・死んだ人たちも・・・・・・壊れ行く世界も・・・・・・消えたりなんしない。」

光に包まれた がケフカを抱きしめる

「私達が諦めないかぎり。・・・・・・私たちが忘れない限り。」

ケフカも強い力で を抱きしめ返す。

「諦めない。絶対に諦めないよ。そして・・・・・・絶対忘れたりなんかしない。・・・絶対に」

が笑った。

「だから、絶対・・・・・諦めないで・・・・」

・・・・っ!!!」

ケフカの腕の力が緩み、頬を涙が伝った。

「戦いからは。破壊からは。崩壊からは。誰かの死からはなにも生まれない・・・・・・」

の光翼が2人を包んだ。

「お願い・・・・この世界に生きるすべての人たち・・・・・・」

の体がケフカの腕から解かれた。

ケフカも呆然と眼を見開いたまま を眺める。

眼からはたえず涙がこぼれていた。

「・・・・負けないで。」

辺りが一瞬の間、強い閃光に包まれた。



「・・・ ・・・・・っ!!!!」

ケフカの叫びも届かず、



剣を構えるロックは剣を落とし、



ティナとセリスの眼からはたえず涙がこぼれ、



人は呆然とただただその情景を眺める。



は三闘神と共に天に消える。



「・・・・・・・連れて行かないでくれ」

三闘神に向かってケフカが呟く。

そしてそれは叫びに変わった。

を・・・私の大事な人間を連れて行かないでくれ!!!!!!」

三闘神が閉じていた眼をゆっくり開いた。



『我ら三闘神。すべての魔導を司る三人の神』

『願わくば人の願望までも実現す。』

『汝の願いは・・・何を持って何を辞す?』



三闘神の声が聞こえる。

耳に響くようで頭の中にこだます声と光。

を・・・私の大切な人間を連れて行かないでくれ・・・・!!!」

『――』

三闘神が何かを告げると同時に閃光が強まり、世界一帯にひろがった。

















































負けないで。















彼女はそういった。















私は――・・・・・・



















































閃光が止み、辺りが再び雲間からさす太陽の光だけになった。

皆は地面に倒れている

ケフカも地面に倒れていた。

「・・・・・・っ」

起き上がる。そして、空を見上げた。

「・・・・三闘神・・・・何をいったんだ・・・・」

すぅっと抜けるように刺す光がケフカを照らした。

最後に三闘神が何をいったのかはわからない。

「・・・・・・ん」

隣で小さく声が聞こえた。

見下ろすとそこには




































































何より大切な彼女が倒れていた。





























!!!」

息がある。死んでいない。

そう確認したとき、今まで忘れていた感情がよみがえる。

「ん・・・・・ケフ・・・・・カ?」

・・・!!」

何か忘れていたおさえきれない感情に押されてケフカは を抱きしめた。

そこには完全に自我が戻り、前の優しいケフカが居た。

「・・・・・・・負けなかったんだね・・・・・ありがとうケフカ。」

そういって淡く微笑んだ がケフカの震える背を抱きしめ返した。

「・・・・・ごめんね」

ケフカは を抱きしめたままただ黙っていた。

「終ったんだな・・・・・」

エドガーの声が聞こえた。

ロックの声も聞こえる。

が死ななくて・・・・本当によかった・・・・」

ティナの涙声が聞こえる。



ああ。私は











皆大好き。

















そして









































この世界に生まれてよかった。






















                                       
                          ―END―




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